虫歯は、その病期によって治療法が異なりますが、基本的に治療できる病気です。しかし、人によっては自分が虫歯であることに気が付きながら、治療を受けずに放置していることがあります。ですが、虫歯を放置することは、思った以上に恐ろしいことだと理解しなければなりません。そこで、虫歯を放置するとどうなるのかについて解説します。
■虫歯は自然治癒しない
病気によっては自然に治る(自然治癒)こともありますが、虫歯は自然に治ることはありません。そもそも虫歯とは、虫歯菌が糖分を分解して酸を生み出し、それによって歯のカルシウムを溶かし出す(脱灰)病気です。この原因菌は誰の口の中にでも存在しているものであり、数の差はあれども誰もが虫歯菌の脅威にさらされていることになります。これを無くすことは基本的に不可能です。
デンタルケアがしっかりしていれば、唾液の作用で再石灰化(溶け出したカルシウムを元に戻す作用)が行われますが、不十分だと脱灰の作用が勝り、再石灰化が追いつかなくなります。
虫歯の症状の一つに「痛み」があります。虫歯が進行すると次第に痛みが強くなるのですが、ある時を境に痛みが徐々に無くなっていきます。これを「自然に治った」と勘違いする人もいるのですが、この状態は虫歯としては末期に近い状態です。痛みを感じる神経が死んでしまったことにより、痛みを感じなくなっているからです。
■口臭の原因になる
虫歯を放置していると、「口臭」が悪化する原因になります。虫歯によって発生した穴の中に食べかすが残ってしまい、これが腐敗を起こすことで強い口臭の原因になります。
■かみ合わせが悪くなる
虫歯を放置すると、「かみ合わせ」が悪くなるというデメリットがあります。虫歯によって歯が溶かされ、その形が変わることによってかみ合わせにも影響します。かみ合わせの悪さは食事に影響するだけでなく、顎関節に悪影響を及ぼし、頭痛や肩こり、腰痛などの原因になることもあります。
■歯原性菌血症によって全身疾患に
虫歯を放置することによるデメリットは、口の中だけに留まりません。虫歯が進行した歯の神経から細菌が血液に乗って全身に回る「歯原性菌血症」のリスクがあるのです。
菌血症とは、傷口から細菌が入り込み、血液に乗って全身に運ばれることをいいます。菌血症は一般的な怪我などでも引き起こし、多くの人がそのリスクを抱えていますが、基本的にそれを原因として重篤な細菌感染症を引き起こすことはありません。
しかし、歯原性菌血症の場合は事情が異なります。一般的な怪我とは異なり、歯原性菌血症は虫歯や歯周病を放置している限りそのリスクが続きます。そして、口腔内の衛生状態が悪い場合において、日常的に菌血症のリスクにさらされることになります。
虫歯は基本的に口腔内の症状に留まりますが、歯原性菌血症になると症状が全身に及びます。特に体調を崩していたり加齢によって免疫機能が低下していると、心筋梗塞や脳梗塞を始めとする重篤な病気の引き金になる可能性が考えられるのです。「虫歯で命を落とす」と何かで見聞きしたことがある人もいると思いますが、歯原性菌血症によるものであると考えられます。
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